アーケード版アイドルマスターとはどういうゲームだったのか

 なんか劇場版が思いの外好調だったようで嬉しい限りのバリバリ夕張Pです。感傷にふけって昔を思い出してしまったのでつらつらと書いていこうと思います。

 アーケード版アイドルマスター(以下アケマス)は2005年の7月に本稼働を始めたゲームです。その前に行われたロケーションテスト(ロケテ)ではプレイ待ち時間360分を記録した、もう最初から伝説を作ったゲームです。

 私はロケテの話を知らなくて、QMA2で忙しいというのもあって本稼働後も1週間くらい様子見だったんですが、そのQMA2のランカーが遊んでいるのを見て「あ、この人がやってるなら面白いのかな?」と思って500円玉を2枚投入(初期はカード代とチュートリアルで1000円した)したのが始まりです。

 始めるまでは恥ずかしかったんですよ。爆音で女の子の声が流れるギャルゲーという第一印象だったので。筐体にはヘッドホン端子は付いてましたがヘッドホンを付けてもスピーカーから音が出るのですよ。

 チュートリアルをしてもなんだかよくわからない。9回ボタン押してボーカル、ダンス、ビジュアルの点数それぞれ3位以上で☆がもらえて、それを3セットやって最終的に☆の多い人が勝ち、というところまでは分かったんです。でも、3位以内に入るコツみたいなものがよく分からない。適当に分配しても「うーん…」と言った感じで。「説明はあった、けれども…」という状況。

 周りの人に教えてもらって「審査員の色の減り方は他の人が何色(ボーカル→赤、ダンス→青、ビジュアル→黄)を押しているのか」という指標になって「審査員のコメントは自分が今どの辺にいるのかの指標になる」との事でした。赤の審査員の色の減り方が多いならば他の人(自分も含めて、だけど)がボーカル推しできている、審査員が「6番、ボーカルいいねぇ」とか言うと6番の人がボーカルで順位を上げたということがわかる、という事です。

 で、始めて1ヶ月、アピールする(ボタンを押す)のに「ジャストアピール」というものがある、と言う事を教えてもらいまして。基本出たらすぐ押していた俺は「アピールの音が違うことがある」と言う事は分かっていたものの、それが曲のビートに合っているか否かという事は分かっていないのでした。曲のビートに合わせてボタンを押すと普通のアピールよりも点数が高く入るのです。やってみたら「うぉぉぉぉぉぉぉ」という感じでした。ちょりーん、ちょりーん。

 審査員の色の減りを見たり審査員の発言を見たり他プレーヤーの思い出使用状況を見たりとかなり視野が広くなければつらいオーディション(他の人との対戦)でした。

 あとケータイにアイドルからメールが来るというのも新しかった。オンラインゲームの新しい可能性を見た気がしました。ユニットを作ると「よろしくお願いします」みたいなメールが来て、時々「いついつに事務所にいますので来てください」と来て行くとテンションマックスだったりとか。あとユニット解散後もメール来てました。やよいだけはユニットにいる時だけ事務所からケータイを借りているという設定だったので解散後のメールは来ませんでしたが…。

 このゲームの特徴として、オーディションに負けると異常に悔しい、という点があるんですよ。「勝たせてやれなくてごめんなぁ」と画面の向こうのアイドルに言っちゃうくらい。一緒にレッスンして一緒に営業をこなして、さあ晴れ舞台に立たせてやる!という意気込みでオーディションしますから。あと育てたアイドルのライブも見れません。勝った人だけの特権です。それがライブモニターに映って他の人に魅せつけてやることができるんです。「俺のアイドル、いいだろぉ?」みたいな。

 初めてのプロデュースでは雪歩を選びました。ロケテでもダントツの一番人気だったようで「人気キャラが強キャラでは誰も他の人を使わなくなる」とでも思ったのかステータス調整までされたとの事です。

 もちろん上手くいく訳もなくFランク(一番下)で引退の憂えき目に遭います。これがまた泣けてくるんですよ。千早でスパイラルに陥ってファン1人という最後を迎えたこともありました。本当に悔しいんですよ。「今度はSまで行かせてやる!」と本気で感情移入してました。

 ナムコの方でも「厳しすぎる、という声がある」ということに対してオーディションの合格人数を増やしたりそのオーディションで獲得できるファン数を増やしたりと言ったバージョンアップが2回されました。2006年に出たVer 1.3が最終バージョンだったでしょうか。俺はVer1.3になって、レッスンと営業に飽きたのでやらなくなってしまいました。

 最終成績としてはプロデューサーランクは超売れっ子プロデューサー(Lv1~9まであるうちの8に相当)、一番ファン人数が多かったユニットでアイドルランクSランクでファン人数がVer1.2の時に出した167万人だったかな。要は大したことないプロデューサーだったと言う事です。

 初期バージョンではファン人数150万人出したら大したものでした。通常オーディションでファン増加数が最高5万人でそれが1枠しかない状況でしたから。後のバージョンになって5万が2枠合格になったり、6万、7万と言ったオーディションも追加されました。Ver 1.3では歴代1位のユニットはファン人数450万人とかにまで増えてました。

 戦略も様々な物が出ました。最初の特別オーディションである「ルーキーズ」の受験期限の13週目の直前までひたすらレッスンをしてアイドルたちの地のチカラを上げきる戦略とか、負けると大幅にステータスが下がるアイドルランクB以上にわざと上げなくて、残りの特別オーディションの数と活動限界週を合わせてそこまではランクCでオーディションを受ける、とか。ランクCだと負けてもほとんど能力が落ちないのですよ。ただ、残りの特別オーディションで負けられないので事故が怖いやり方です。前者も追加レッスンが出ないと能力を上げきる事ができません。この辺はかなりシビアでファン人数のスコアアタックをするホントの上級者向けな戦略でした。

 じゃあ一般の人はどうだったか、というと初期はレッスン→レッスン→レッスン→オーディション→レッスン…という繰り返しで、略して「レレレオ」なんて言われてました。で、程なく能力が上がりきったらオーディション連戦、ですね。中級者になるとノートとかに育成計画やらその週に何をやったかを記録してたりとか。あとは対人戦にならないようにする、とかかな。対CPUと対人間では前者の方が明らかにやりやすいのですよ。対戦ゲームなのに対人戦を避けるという製作者が思ってもみなかった状況になってました。まあ後に「GT戦」と呼ばれるアイマスプレーヤーが多いゴールデンタイム(GT)に意図的に対人戦を行うという催し物も有志で開かれたりしてました。何も知らない一般人にはさぞ迷惑だったことでしょうが(笑)。

 始めた時には「半年持てばいいかなぁ」と思っていたオンライン稼働ですが、なんだかんだがあってVer 1.3のまま5年続きました。恐らく同一バージョンでの稼働年数は他に類を見ない長寿です。QMAも1年に1回バージョンアップしますしね。それだけオーディションが楽しかったのです。

 1年間夢中になったアケマスですが、何がよかったかって「負けても後戻りできないスリル」かなぁと思います。特に終盤戦でアイドルランクも上がりきってる状態では「負け=終わり」を意味します。また序盤戦でもTOPxTOPという特別オーディションを受けるまでに負けてしまうとそれだけでアイドルランクSランクに行けない(アイドルランクSはファン人数150万人以上で特別オーディション全勝という条件でした。TOPxTOPを受ける前に負けるとTOPxTOPが受けられないし、TOPxTOPで負けると再戦できない)ので結局いつも負けられない。その緊張感が心地よかったです。特にアケマス初期では1プレイ200円と高くて終盤に負ける事はそれまで費やした数千円をドブに捨てるような感じでしたから。

 まあ、やればやるほど安くなるXbox360版は出ましたけど負けたらリセットできましたからね。それでXbox360版はスルーしました。やっぱり後戻りできないスリルは何物にも代えがたい。

 あと、アケマスをやってた人は「この子最高に好き!」というキャラはいても「この子嫌い」というキャラがいないことが多いです。プロデューサーランクの一番上「アイドルマスター」になるには全員を1回以上プロデュースしなければいけなくて、ちょっと敬遠気味だったキャラも遊ぶうちに感情移入するんです。また、アイドルのことを「戦友」と呼ぶ人も多いです。プロデューサーと一緒にサバイバルしてきた仲間ですからね。俺も誰が一番好きか嫌いかって聞かれると結構困ります。みんな一緒に歩んできた仲間ですから。優劣付けられない。

 だから、コンシューマーの続編が出たりアニメになったり声優さんがライブしたりとコンテンツが成長していくのはすごく嬉しいです。コンテンツが成長するということはアイドルたちも成長してるって事だと思いますので。プロデューサー冥利に尽きます。

 本当に今まで応援し続けてよかったです。これからも応援します。アイマスありがとう、これからもよろしく。