アイドルクロニクルに送るレクイエム(という名の思い出話とか)

 それはスマホ3Dゲーム黎明期にタイトーという意外なところから現れた。

 「アイドルクロニクル」

 スマホでアイドルが歌う、踊る!しかも3人同時に!

 スマホで3Dキャラがグリグリ動くゲームはすでにスクールガールストライカーズ(スクスト)とかあったけど当時で出てくるのは2体同時、くらいだった。
 当時はスクールアイドルフェスティバル(スクフェス)がキャズムを超えてぐんぐん伸び始めたあたりで、各社が慌てて自社IPでのリズムゲーム(アイドルマスターシンデレラガールズスターライトステージ(デレステ)やガールフレンド(♪)とか)や新規IP(TOKYO 7th SISTERSとか)を作り始めたあたり(実際はスクフェスが出た時にもう始まってたかもしれないけど)で、各社のライバルゲームが出てくる半年も前だった。
 俺は「スマホでアイマスみたいのが動く時代になったか」と感激し、情報を得たその日に事前登録をした。PVを見てはにやけてた。
 また、このアイドルクロニクル(アイクロ)、スマホ単体で録画ができて(Lobi使用)、それを動画投稿サービスに直接投稿できる、というのも新しかった。アイマス、特にアケマスやってた人はわかると思うんだけど、自分が手塩かけたアイドルは人に見せたい、自慢したいというのはあったんです。アイドルクロニクルはそれが簡単にできた。
 アイマスではアイドルとして未熟なところはライブシーンでの「アクシデント」として表現されていたけれど、アイドルクロニクルではダンスの難易度として表現された。ライブ等の仕事やレッスンをこなすとダンスの難易度が上がり、さらにかっこかわいくなっていく。音楽は同じだけれどアイドルたちの成長はわかるようになっていた。
 ここまで書いたの読んでるとアイドルクロニクルはサクセスストーリーしか見えないんだけど、実際は違ってしまった。
 まず、出た当初はロードがすごく遅かった。ゲーム開始時のロードで地下鉄ひと駅行けるほど。これはのちのち改善されるんだけど。そして一部のハイエンドスマホでしか動かなかった。3Dが売りなので仕方ないと言えば仕方ないのだが。ちょうどタイトーがスクエニ傘下に入ったのでてっきりスクストのエンジン使ってさくさく動くもんだと思ってただけに「なぜ?」と外野は首を傾げるのだった(まあ技術移転は簡単じゃないけど)。またライブもレッスンも仕事も曲があるかないかの違いだけでやることは同じで飽きやすかった。
 アイクロはスクストと同じような着せ替えゲーで、もちろんガチャで衣装をゲットするんだけど、すぐクローゼットが埋まってしまう。タイトーとしてはクローゼット拡張でちまちま稼ぐつもりだったんだろうけど、これが良くなかった。ガチャ職人曰く「衣装整理してるうちにガチャ熱が冷める」そうなのだ。思えばスクストはガチャで得られるものは特に何もしなくても全部持てるし、デレステや(♪)は入りきらなかったアイドルはギフトボックス入りするしでガチャをするのにやめようとか考える暇を与えない(それが「気持ちよく回せる」ということなのだそうだ)のがトレンド。実際そういうゲームは売上も高い。
 実際タイトーがどう考えてたかはわからないけれどガチャで儲けようとするなら――それがソシャゲを作る理由だろうけど――もっと「気持ちよく回せる」仕組みを作るべきだったんじゃないだろうか。まあ「小中学生女子でも遊べるようにパンツとかの性的要素は排除した」とは言ってたが小中学生がガンガン課金しないようにとの配慮、でもないんだろうな。
 郷田P(アイクロの総合プロデューサーだった人)は目の付け所は良かったし、仕事も早かった。それが他社が3Dリズムゲームをまだ開発してる中いち早くそれを出せた要因じゃないかと思う。でも課金につながらないシステムを作ってしまったのでエコシステムがうまく回らなかった。その辺が曲が増えないだとかガチャで新衣装が月1でしか出てこない、さらに復刻で1ヶ月持たせたりというような状況になってしまった。
 また先程のガチャ職人曰く「手を広げすぎて足元がおろそかだった」とも。確かにメディアミックス展開(アニメこそやらなかったものの)を初期に行って、ゲームの方はロード時間短縮以外はなかなか実装されなかった感じだった。
 スマホアイドルゲームのマイルストーンともいうべき作品が終わってしまうのはくるものがあるけれど、アイクロのいいところはデレステや(♪)に受け継がれた。悪いところは改善された。こう言ってしまうのは酷かもしれないけどアイクロはもう役目を終えてしまったのかな、と。

 アイクロに関わったすべての皆様、まだ2ヶ月あるけどお疲れ様でした。また私達の心に響くゲームを開発してください!ありがとうございました!